本当の自分の声

本当の自分の声

身体を緩め、バランスを綺麗に整え、正しい呼吸と発声ができれば、倍音も豊かになり、奏でられるその方の声の響きは、大変魅力的で、唯一なものになります。

Breavo-paraではそれを「本当の自分の声」と呼んでいます。

自然界には、ある高さの音のみで存在する物などありません。必ず基準となる音に、倍音が一定のバランスで含まれています。同じ音程、同じ音量でも、人の声、楽器の音など、それぞれ固有の響きがします。全ては倍音の含み具合、この倍音をどういうバランスで含んでいるかによって、「響き」に個性が生まれるのです。

同じ人や楽器であるならば、どんな音を出そうが、含まれる倍音のバランスは本質的には変わりません。
ところが、同じ人や楽器であっても、コンディションや、奏者によって音色に変化が生じてきます。
身体を楽器のようにメンテナンスし、緊張を緩め、正しく発声ができるようになると、本来持っているはずの響きを取り戻す事ができます。そして身体も呼吸も楽になり、自分の声の響きに安心してパフォーマンスする事ができます。その時、姿勢や表情も美しくなり、人としても魅力的になっている事に気付く事でしょう。

声は変化するものなのです。

声を響かせる

音とは音源の振動により、媒体(例えば空気)が振動し、その振動が波のように広がって伝わったものです。その音を何かしら視覚的に捉えようとした時、この同じ形の波が上下に周期的に繰り返す振動の様子を(波形 として)表示するのが一般的です。その波形を決めているのは、音の中の倍音の含み具合です。

声の源となる声帯振動の倍音の強さは、周波数が高い程弱くなります。喉声というのは、この音声の音色に近くなります。この声帯振動を、声道 、さらに胸郭や鼻腔、副鼻腔で共鳴 させることにより、その人固有の周波数の特定帯域ごとに倍音が増幅され、声の響きが大きくなります。この増幅される周波数成分のピークをフォルマント と呼び、人の可聴域(およそ20Hz~20kHz)の何箇所かに存在し、その位置は母音によっても変化します。

フォルマントを決めるのは、声道の長さ(声帯から口を出るまでの道のり)が優位なので、発声時の喉頭の位置によってフォルマントも変化します。発声の仕方である程度コントロールできるのです。

声というのは、よく言われる「声帯の長短で決まる」というような単純なものではなく、声帯の弾力性はもちろん、骨格や筋肉のバランス、発声時の身体状態と大きく相関を持つこのフォルマントが、その響きに影響を与えています。

Breavo-paraでは

声帯の弾力性を取り戻し、より共鳴しやすい身体へと調整し、無理なく共鳴させるための胸振発声法を磨くことで、その人の本来の響きを取り出していきます。トレーニングを続けることで、声を響かせるための共鳴腔を、胸から身体全体へと拡げていきます。

Breavoクラスでは、響きの変化を視覚的にも捉えられるよう、定期的に音声を録音しています。声のポテンシャルとして、音圧(響きの強さ)で評価できるよう、録音レベルを全ての受講生で一定にしています。

下図は声の響きに含まれる各周波数の強さを色にして表したもので、スペクトログラムと言われています。細かく斑模様が現れますが、これが声帯振動の倍音です。そして広範囲にわたって色が濃く現れている領域がフォルマントを中心とした、共鳴により響きが強く出ている周波数帯域です。一方で響きが減衰する帯域が現れるので、色が薄くなる部分がありますが、これは当然の結果であり、むしろ個人の声の特性を表しています。

  • 入会時
  • 半年後
  • 1年後
  • 2年目以降

入会時

響きが小さいため、マイクでも十分な音を集音できません。フォルマントも不明瞭で、声帯をメインにした発声である事がわかります。
図1 入会時のスペクトログラム

半年後

フォルマント構造が現れてきており、無理なく響きが出てきています。低域が豊かで、安心感、信頼感を与えられるようになります。また、人の耳に敏感な3000~5000Hzの周波数帯も良く出ており、聞き取りやすい声に変化してきた事がわかります。
図2 半年後のスペクトログラム

1年後

人の可聴域(およそ20Hz~20kHz)全体に渡って響きが強く出ている事がわかります。声のスケール感が増し、マイクを使わずとも、大きなホールや舞台で、最後列まで届かせられるほどのポテンシャルに向上しています。また、コンディションによらず一定レベルのクオリティーを維持できるようになります。
図3 1年後のスペクトログラム

2年目以降

声の音色をコントロールし、感情や情景を表現できるようになってきます。上図のポテンシャルを備えた上で、楽に声の響きにイメージを乗せて表現しています。音圧レベルは下がっても、可聴域全体のクオリティーは維持しています。
図4 2年目以降のスペクトログラム

響かせた、その先にあるもの

スペクトログラムだけで声質を評価する事は、現状では難しい事です。赤い領域が多い場合には少なくとも良く声が出ている、とは言えますが、録音の瞬間、喉を犠牲にし、怒鳴って大きな声を出しても、その音声データはある程度は赤くなります。

響きが聴いていて心地良いかどうかは、各倍音の強さの加減と、その混ざり具合によります。聞き手の好みも当然関係してきます。

また、場に調和した響き、というものも忘れてはなりません。

どうしても、はじめから綺麗な声を出す、綺麗に話す、綺麗に歌う、というところから入ってしまいがちです。

それも悪くはありません。すぐに結果を出さなければならない事が多いのも事実です。

しかし、図3のようなポテンシャルを持った声と、そうではない声では、同じテクニックで表現した場合、人を感動させられる力の差は、大変大きなものになってしまいます。

1年トレーニングを継続すれば、本来持っているはずの声の響きの力が、生きていくための大きな力となっていく事、そして生きるフィールドが拡がっていく事を感じていただけることでしょう。身体の変化にはある程度時間はかかりますし、そこに個人差があるのは確かです。しかし、これは決して才能によるものではなく、トレーニングなので、どなたでも必ず達成できます。

皆さんができるだけ早く変化を体感できるよう、プログラムも年々進化させております。 楽しく、気持ち良く、いつの間にか声が出た。そんなプログラムができるよう、私たちも日々努力してまいります。

スタジオでお会いできます事を楽しみにしております。